偽りの祭壇掲げ、反逆の旗あげよとひとりぼっちのおうさまは呼ばわる。迷い込んだちいさなひつじはオオカミの口の中に身を投げ出す。

 静かなぶなの森で、その淵は、何千年の昔から淵淵と澄んだ水を横たわらせていたんですって。しんしんと、えんえんと。
その水は本当に綺麗な色をたたえていて、昔、戦に敗れた民人が辿り着いたとき、「この水の神が、わたしたちを導き、生き永らえさせてくださる」って言って、社を建てて淵の神を祭るようになったんですって。
 …時が過ぎ、民人は繁栄し…やがてひとの心の傾向に従い、更なる富と繁栄を追い求めるようになったとき。…初めは感謝の気持ちに溢れていた信仰は汚れ、深い水底の汲み取れない暗さのように…すべてが変わっていったそうよ。
さあ、いま、その静かな淵に、血の捧げものをささげようとする、少女がいたの。
腿までを淵に浸け、ちいさな手にはきらきら光るナイフが握られていたの。
ねえ、そのナイフが少女のしろい手首に当てられた時よ。

「そこで何をしている!」
 鋭く咎める声が、少女の動きを阻んだの。少女がびくッて身体を震わせて、声の方を振り返って見ると、太陽が燃えているような髪をした、新しくこの国の君主となったひとが、岩と岩に足を渡して立っていたんだわ。
「…メイクイホンさま…?」って、少女はびっくりしていたわ。
 それから、彼に直接会えたことに、希望を見出したかのように、水の中に伏したの。
 赤い髪の王様は、舌打ちをすると、淵に飛び込んで荒々しく少女の腕を掴んだわ!
「勝手に俺の淵に近付くな
 殺されたいか!」

 少女は急きこんで嘆願したわ。
「もうしわけありません!不調法を承知でここまで参りました!祈りを聴いていただけると聞き及んで…お願いします!」

 王様のみどりの瞳は、嘆願する民を冷ややかに見下ろすと、冷たく言ったわ。
「願い事ならまことの神にするんだな
 さっさと出て行け!二度と近付くな!」

 水の深みに、一度は身体を投げ出された少女は、それでも王様にすがりついたわ。
「お願いです!妹が…病に伏して死にかけているのです!
 淵の神は、血の代償と引き換えに、願いを聞き届けてくださると聞いて、禁忌と知りつつここまでまいりました!
 妹の代わりにわたくしの命をささげます!
 わたくしは処女です!」

 少女の懇願に、王様はもう一度つめたい返事のために口を開きかけたの。
ああ、それなのに、背後から声がしたんだわ。
「ホンさま?」

 王様と少女がそちらを見ると、巫女装束に身を固めた初老の女が、苔むした岩の向こう側に立っていたの。
 王様は少女に小声でダメ押したわ。
「なにも言うなよ」

 巫女は王様の後ろにいる少女に気がついて、いやらしい細い眉を、怪訝そうに上げたんだわ。一重のつり上がった目。酷薄そうな薄い唇。
 王様は少女を引き寄せると、巫女に向かって応えたわ。
「ただの拾いものだ」
 巫女は今度は眉間にしわを寄せたわ。

王様ったら、少女を担ぐと、巫女の方に向かって水の中に放り投げちゃった!少女の自重で、水しぶきがあがって、巫女はびしょぬれになっちゃったわ!
 そうしておいて、軽々と岩の上に飛び乗ると、「着飾らせて、連れてこい」って、踵を返しながら言うの。
 びしょぬれの巫女は、少女を水から引き上げると言ったわ。
「こんな娘をでございますか?」

 王様は去りながら言うの。
「きさまの連れてくる女狐どもよりましだ」
「ですが…」って巫女が言いかけると、王様は首だけで振り返って言ったわ。
「黙れ。殺すぞ」
 巫女は震えあがっちゃって、黙って首を下げたわ。
少女はぽかんとしてそのやり取りを見てんだわ。

 ああ、いったい王様は、どうしちゃったのかしら。
ティンシャンツーではなく、こんなところで王様になって、何をしようとしているのかしら。

この小さな国の名は、ホンリェンホイ。
古には栄え、今はとても堕落した都市よ。
辻辻には娼婦や男娼が立ち、人買いと奴隷商人が取引をし、盗人と金貸しと強欲な商人が横行していたわ。

 さあ、その中で、いま人々が最も注目しているのは、「神様に任命された王」であるって有名なメイクイホンが、この都市で、古の神である「淵の神」を奉り、淵の社をぴかぴかに建てなおし、ひとびとに「自分のもとに集まるよう呼ばわって」いることだったの!
いったいどういうことなのかしら!
王様は、自分が何者であるか、忘れてでもしまったっていうのかしら!

ちいさな自分の娘のことまでも?
…お話の続きを待ってね。
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テーマ : 自作連載ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

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Baby pink amy

Author:Baby pink amy
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